今日のテーマは「証明写真に写る顔。左右非対称、雌雄眼、本当の顔とは?」
このテーマは、多くの就活生にとって興味のある話題ではないでしょうか。
加えて、証明写真でも就活用と身分証明用との写真の意味の違い、鏡から見た自分と証明写真、お顔と口の左右非対称、雌雄眼つまり目の非対称などをテーマにして、例年多くの就活生が就職用の証明写真の際に疑問に思っていることを、長年就活証明写真を撮影している筆者がわかりやすく解説します。
わかりやすく、解説したいと思っています。
1.証明写真って、どんな写真なの?
証明写真は通常、真正面から撮影します。ですので、自分の顔が真正面に写っている写真を見ることになりますが、このような写真は証明写真以外にみることはないでしょう。
そもそも、証明写真自体を撮影する機会は限られていますよね。ですから、証明写真を見て、真正面から見る写真は、いつも見慣れないていない写真で当然なのです。
もちろん、真正面から撮らない証明写真もあります。撮影でよくあるのは、エアラインやアナウンサー用の証明写真や、外資系企業での社員証用の証明写真など。
少し体を斜め向きにむけて撮影をします。海外では、真正面から撮影するID-PHOTOは、本人確認用での用途がほとんどで、ビジネス用途では斜め向きに撮ることが多いようです。
日本でも、一口に「証明写真」と言っても、その利用方法によって、効果的に魅せるために撮影するポイントも違ってくるのをご存じですか?
次に、この使われ方の違いについて説明したいと思います。
2.証明写真でも、用途によって使われ方が違うのはどうして?
一括りで「証明写真」といっても、その使用方法には、以下のように分類されます。
(1)免許証、パスポート、ビザなど、本人識別を主目的とした身分証明用の写真(identification photograph)
(2)上記1の要素の他に、その人の雰囲気など肖像写真的要素を写しだした、就職用写真、受験面接用写真
免許証やパスポートなどの写真の場合は、提出先の写真の規定がある場合が多く、その規定に合わせて作成しなければ審査に通りません。そのため、その規定に沿っていれば証明写真として合格となります。
例えば、日本国パスポートの場合は、頭頂部の天が4±2ミリ、顔の長さが34±2ミリなどといったサイズの規格から「極端に笑っているなど、平常の表情と大きく異なるもの」はNGなどといった規定があります。
表情が良い悪いは、こういった本人識別、身分証明書用の証明写真には、必須でないことなのです。目的が、真正面からの本人の顔が識別できる、という「顔写真」であることなのです。
一方で、履歴書に貼る就活証明写真や、一部の受験用証明写真は、本人識別ということのプラスして、その人の表情や雰囲気から醸し出される印象というのも無意識のうちに判断されている写真です。
例えば、就職用途で写真を提出する場合は、人事採用担当や、大きな会社の場合は部門の社員、役員なども一瞥します。また、選考が進む間の書類やデータの管理としてその顔写真と書類の内容を、結び付けて考えていることが多いのです。
なぜなら、選考用書類はほとんどが文字情報であり、唯一、視覚情報となっているのが証明写真だからです。
皆様が、採用側になったと仮定してください。新卒生から採用応募の書類が来ました。写真を貼付した履歴書が入っています。まず、どこを見ますか? 最初に見るのは、名前と写真のはずです。
この人の名前が、この写真の人間なんだという関係づけをして、それをキーに学歴や経歴、志望動機などを見渡していくのが通常です。
また、求人数の多い場合は、名前と顔を一致させて、「この前、面接した人、この子だったよね?」という識別にも使うはずです。写真があった方が、判別がしやすいんです。
そこで、身だしなみがしっかりしていない写真であったり、冴えない表情の顔を何度も見ていると、「本当にやる気のある人なのかな?」などと、勝手に判断されてしまったりもするんです。
実は、当スタジオは今春、NHK「おはよう日本」で、就活生が殺到する写真スタジオということで紹介されたのですが、一連のコーナーでユニリーバ・ジャパン様が選考に「顔写真を廃止」するという話題もありました。
なぜ顔写真を廃止したかというと、その人の仕事力だけではなく、顔写真の雰囲気が選考の要素に入ってしまうことを排除するためなのでしょう。しかし、実施には、社内での批判も大きかったようです。やはり、顔写真がないと参照するのが大変だと思うのです。
3.真正面向きの顔写真。でも、なぜいつもの自分と違って見えるの?
ところで、真正面の自分の証明写真を見て、「あれ?いつもの自分とは違うのでは?」と思う方も多いのではないでしょうか。
そう思うことは、正解でもあり、不正解でもあります。
と言いますのも、自分が自分の顔を他人目線で見ることはほぼないからです。
毎日、鏡で見る顔の向きと、他人から見る顔の左右は反対なのです。
つまり鏡で見ている自分は、証明写真とは左右が逆です。ということは、鏡をみているあなたから見れば、鏡の自分の顔は正しいことになりますが、他人から見れば証明写真の顔が正しいことになります。
4.他人から見る自分と、自分が見ている自分
そのため、他人が見る自分と、自分が知っている自分の差異が多かれ少なかれ出来てきます。
人は個人差はありますが多くの方が「自分は正しい」と思いながら生きています。これは当然です。ですが、「他人から見たときにこう写るんです」という証明写真は、あなた以外の多くの人にとっては正しい写真となります。
筆者が昔撮影した方で、「顔を左右に反転してください。これが自分の顔です」とお願いされたことが1度ありました。しかし、そのお顔はその方にとっては自分の顔でも、他人からみたイメージとは少しかけ離れてしまうのです。
どちらを優先しますか?
ここで、どうして左右が逆転すると自分が違って見えるのか、簡単に解説したいと思います。
人は、それぞれ個人差はありますが、お鼻を中心にお顔を真っ二つに割ったときに、左と右では、顔の輪郭、眉毛の高さ、目の大きさ・形、口角の上がり方などすべてが非対称です。
非対称であるからこそ、反転したときに左右差が気になるのです。
5.「表情のある顔」「表情のない顔」のお話
それでは、左右差が気になるんだったら、左右をバランスよく修正できないかという発想も出てきます。
しかし、これをぴったり左右同じにしてしまうと、すばらしいほど均整がとれているけれども「無機質」で「表情のない」お顔になってしまうんです。
例えば、能面のお顔を思い出してください。左右バランスが良いものの、能面だけではどこか冷たく人間味が感じられない、何を考えているのかわからないという印象を抱きませんか?
人間の顔は、左右が違うからこそ、アシンメトリーだからこそ、表情が豊かになり、人間味を感じられるわけです。
6.目の大きさが左右非対称。雌雄眼はどんな印象?
特に、就活生が気にするのは時代を問わず、目の大きさの非対称と口角の上がり方の非対称です。
しかし、目の大きさが違うことで、そこも表情のひとつとなるわけです。表情があるからこそ、他人にとっては印象に残り魅力的にうつったりもします。
口角の上がり方が左右で違う場合も同様です。
当スタジオでは、修整はできるだけ、その人の持っているパーツの輪郭や、印象をかえないことを原則としていますが、例えば目に関してはシェイプ(形)は同じだけれども、大きさのバランスを少し整えたり、口角の上がり方の違いもお口の輪郭は変えずに傾きだけを直していくという高度な修整を行っています。
ですので、修整前よりはバランスが良く見え、かつ表情が失われない点で、左右非対称を気にする多くのお客様にご好評をいただいているのだと思います。
7.就活証明写真での、顔の作り方、表情のポイント
よく写真撮影では「カメラマンが表情を引き出す」という文句が使われます。これが正しいということは一理ありますが、一番の根本は、被写体であるお客様の心理状態も大きく影響してきます。
とても落ち込んでいて食事も喉に通らないくらいの人が撮影にいらっしゃっても、どんなに頑張っても、その人のベストな表情にはなりません。これは、心の内面が、必ずお顔の表情に再現されてしまうからです。
例えば、政治家でも選挙当選時には意気揚々とした表情であっても、不祥事で会見をしたりする際は同じ人でもお顔の表情が違ってきます。
日本語でも「顔に出る」と言いますが、まさにその通りです。
ですから、スタジオにいらしゃっる際は、難しいのかもしれませんが、心を無にしていらっしゃってください。
スタッフは、精一杯お客様を励ましながら、素敵な表情になれるよう精一杯撮影させていただきます。