本日は、多くのお客様から頂く 悩み や 心配 について、ピックアップして解説したいと思います。
正確に数えたことはないのですが、筆者はおそらく何万人というお顔を見ているのは確実で、撮影するときは、必ずおひとりおひとり簡単なお話をするようにしています。そこから、お客様からいただく < 心配 > や < 悩み >というものが、共通して存在することに気が付くわけです。
特に、女性の方に多いのですが、2つパターンがあります。
・鏡で見るよりも、 証明写真 の自分の顔が良く見えないので、
実際に 面接 の自分と 違って見える ことに不安を感じてしまう
・ 証明写真 の仕上がりが良くて、実際に 面接 に行ったときに、
本来の自分と 違って見える ことに不安を感じてしまう
必ず、この2つパターンに分かれるんです。どうですか? この記事を読んで、「私もそう!」と思ったりしませんか?
このお話を進める前提として、皆様に知っておいてほしいことがございます。
<証明写真から受ける印象と、面接時に相手が感じる印象の差をどう埋めるか>
ひとつは、被写体の一瞬を切り取ったものであるということです。
特に、証明写真は人物を真正面から撮影をして、その一瞬の表情を切り取るわけです。
面接では、微動だにしないお顔がずっと面接官の目の前に座っているわけではなく、自己紹介をしたり、職務経歴を述べたり、ご転職の場合ですと自分の仕事の成果について、相手に伝えたりするときに表情が変わるはずです。また、面接から質問を受けたりお話をしたりするときにも、相槌をうったりしても表情が必ず変わるものです。ですから、面接官は、動いている一連の表情を連続して見て、脳裏に記憶していくことになります。
困った質問を受けて、厳しい顔をしているあなたの表情であったり、これまでの実績を自信満々にお話をしている生き生きとしたあなたの表情であったり、面接中に、印象というものがいくつも相手に伝わるわけです。
最終的に、視覚的な部分に限れば、面接官の脳裏に焼き付くのは、その人の特長的な印象の部分になります。
一方で、証明写真のお顔というのは、静止画ですので、動くことがありません。
写真が、むっつりとして元気のない暗い印象であれば、それがそのまま見る人の脳裏に焼き付くことになります。
その写真を見て、「あっ!この前のこの人だね!」という判別ができることはもちろん重要ですが、写真は止まったままですから、できるだけ「生き生きとして見える」必要があります。表情は真顔でも、生き生きとして見える必要があるんです。
口角をあげている写真だから、明るく見えるのではなく、撮影の仕方によっても印象が変わるんです。
それをうまく、お客様の方にけしかけて、捉えてあげるのが、我々フォトグラファーの役割なんです。
ですので、写真で印象をうまく伝えたいのであれば、いつもは控えめで暗く見えてしまう印象の人でも、1.5倍くらいの勢いで、生き生きとして見せる必要があります。
さて、その前提から、1つ目。
・鏡で見るよりも、証明写真の自分の顔が良く見えないので、実際に面接の自分と違って見えてしまうことに不安を感じてしまう
このパターンの方は、律儀で几帳面で真面目な性格の方に多いのですが、人前に出たり撮影の席に着くと、必要以上に緊張にしてしまう方だったりします。
要は、かしこまってしまって、顔がぎこちなくなったり、実際以上に固く見えてしまうのです。
写真うつりが悪い、というよりは、気持ちが張り詰めていたりすると、表情もいつもと変ってしまうんですね。
撮影のときは、どうしたらよいのかわからなくて当然だと思います。ですので、そこはフォトグラファーにお任せいただき、こちらからいろいろとお声がけをしていきますので、その通りにしていただければよいと思います。
・証明写真の仕上がりが良くて、実際に面接に行ったときに、本来の自分と違って見えてしまうことに不安を感じてしまう
意外にこのような方も多いんです。よく、これまで街にある自分で撮影するスピード写真機で撮影をした写真ばかりを見てきた人は、撮影を終えてレタッチをしていない写真を見ても、「これまでの私と全然違う!こんなに良く見えて、実際に面接のときに違う人だと思われたりしないかな?」っていう人もいらっしゃいます。
証明写真は、ほぼ必要なときに1度しか撮りませんから、手元のその写真が基準となってしまうんです。その写真が良かった、と思っても、それは他の人から見ればそれほどでもなかったり、手持ちの写真だけしか見ませんから、残念ながら他のお店で撮影した写真などとは比べられないんです。
ですので、昨日もいらっしゃいましたが、都心の就活写真専門チェーン店で撮影してもらった写真と「撮影直後に見た写真で全然違うと思いました!」ということになるんです。
話は少し逸れますが、筆者も四半世紀以上前、大学生の頃に就職の写真をそこそこ有名なお店で撮影をしてもらいに行ったことがあります。
その当時は、デジタル写真ではなく、フィルムの写真の時代で、プランも高めのプランと安めのプランがあり、筆者は安めのプランを選んだわけです。
撮影日当日、お店に行くと、もう10人以上が並んでいる状態で、丸椅子に順番を待って座っていました。1時間半くらい待った記憶があります。
ようやく自分の番になり、撮影席に座ると、襟元を整えられた後、撮影は一瞬で終わりました。多分、身だしなみを整える場面を含めても3分もありませんでした。
当時は、現像しなければ写真はわかりませんから、後日写真が自宅に届くわけです。セレクトもお店にお任せするのですが、届いた写真を見てがっかりとした記憶があります。そのお店を紹介してくれた友人の写真を見せてもらったところ、明らかに仕上がりが違うのに気付いて尋ねたところ、彼は料金が高めのプランを選んだとのことで、おひとりにかける時間も十分に取っていたみたいです。
筆者のそのような過去の経験もあり、すべての人に満足してもらえたらベストだと思いながら、たとえすべての人を満たせないとしても、できる限りご満足していただけるように頑張っています。
都心のチェーン店でですと、時間も早く済み、料金も安く、仕上がりも早くというのは、何かを省かなければそれを実現できないんだろうと思います。もちろん、スピード写真よりは良く見えても、その手元のもので、満足してしまえば、別ですが。
本題に戻りまして、写真の方が実際の自分よりも、良く見えるべきだと思います。
実際の自分を見るのは、鏡や写真でしか、自分を把握するものがありません。特に写真が苦手意識があったり、常日頃、写真を撮られ慣れていない方は、そもそも日常の写真が良い表情で写っている写真が少ないのですから、それが「自分の表情」の基準になってしまう。
しかし、このスタジオにいらっしゃり、撮影をした後の表情が生き生きとして見えれば、それがあなたが日常人と接するときに一番よく見える表情に近いはずです。
写真はそもそも、真実をそのまま捉えているわけではなくて、真実のひとつの断面、一瞬を捉えています。企業にあなたを視覚的に見せることを考慮に入れるのであれば、「良い表情」か「悪い表情」かどちらがいいかといえば、良い表情に決まっています。
筆者は広告の写真を撮影をしたりもしますが、その商品がプラの袋詰めのクッキーだった場合に、それをそのまま置いて取ることはしません。
プラの袋の皺を伸ばしたり、袋の形をきれいに整えます。普通に置いてある状況では、そんなきれいな形にはならないものを、本来そうであるだろうという形に直すんです。もし、そうしなければ、写真の方が実物よりも見劣りしてしまうんです。そして、そうでなければ、商品のクライアントの商品企画や宣伝担当の人からクレームが必ず入ります。
自分の表情をいつもよりも少しだけよく見せる、というのがポイントです。もちろん、大げさな雰囲気や、別人に見えてしまうのはだめです。
そのあたりの塩梅は、よく心得ておりますから、ご相談いただければと思います。
最後に、少しだけよいところをうまく強調していくくらいでないと、相手にはわかってもらえません。逆に、自分が気にしているコンプレックスも、意外に人はまったく自分が思うほどに気にしていないものです。
解説者 Jun Hoshina
リクルートフォトスタジオ チーフフォトグラファー。
長年、多くの就活生や転職希望者の方と接し、多くの人がもつ「証明写真に関する悩み」について、どうしたら納得できる形で解決できるのかを研究。
大手企業での勤務経験もあるため、実際の仕事の現場や人事の現場での経験を通して、お客様へのアドバイスをしています。
早大卒。愛知県出身。
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