星名 淳

執筆者・監修者プロフィール

星名 淳

大手企業から依頼を受け、広告写真や人物写真を手がけるリクルートフォトスタジオのフォトグラファー。早稲田大学卒業…

大手企業から依頼を受け、広告写真や人物写真を手がけるリクルートフォトスタジオのフォトグラファー。早稲田大学卒業後、上場企業や外資系企業で営業、IT、企画、人材採用などの実務を経験。現在も人材会社との接点を持ち、就活・転職用証明写真では、応募先の業界や職種を理解したうえで撮影しています。フィルム写真が主流だった1995年にPhotoshopに触れ、現在は撮影から色・明るさの調整、人物レタッチまで一貫して担当しています。

就活写真を選ぶ前に、
僕から伝えたいこと

この文章を読んでいる方は、「就活写真をどこで撮ろうか」と考えている就活生、あるいはそのご家族だと思います。最初に、忖度なくお話しします。

なぜ、撮影者の顔を出すのか

写真館はたくさんあります。就活写真を専門に掲げる店もあれば、全国展開しているチェーン店もあります。リクルートフォトスタジオは、約15年前、アパートの一室から就活写真の撮影を始めました。多くの就活生に支えていただき、現在は本店と下北沢店の2店舗を運営しています。

では、なぜ僕が顔を出して、わざわざこのような話をするのか。「プロのフォトグラファーが撮影します」と書かれていても、実際に誰が撮るのか、どのような考えで撮っているのかは、ほとんど分からないからです。

就活写真を撮る機会は、人生の中で何度もあるものではありません。そのため、多くの方は比較する材料を持っていません。しかし実際には、写真館によっても、担当するフォトグラファーによっても、仕上がりはまったく違います。

美容室を想像すると分かりやすいと思います。同じ美容室でも、自分に合う美容師もいれば、そうではない美容師もいます。技術だけではなく、こちらの希望を理解する力や、似合う形を見つける感覚にも差があります。写真撮影も同じです。

写真は、どこで買っても同じ商品ではありません。

たとえば、同じブランドのチョコレートなら、A店で買ってもB店で買っても中身は同じです。しかし写真は違います。誰が、どのように見て、どの瞬間にシャッターを切るかによって、結果が変わります。

だから、僕が撮影した写真を気に入ってくださった方は、転職やプロフィール写真などの機会に、何年かたってから再び来店してくださいます。友人や先輩から紹介されて来てくださる方も少なくありません。

国政選挙のポスター撮影でも、大企業の社長さんの撮影でも、就活・転職の証明写真でも、僕は同じ熱量で撮影しています。もちろん、好き嫌いもあってすべての人には満足いただけないとしても、同じ撮影ならば、多くの人に喜んでもらって、一瞬でも幸せな気持ちになってもらいたい。
そんな風に、いつも思いながら、カメラを手にしています。

広告ではなく、実際に撮影を受けた方から次の方へつながっていく。僕は、これが本当の口コミだと思っています。

就活写真は、本人確認用の証明写真とは違います

意外に多いのが、就職・転職用の証明写真を、運転免許証やパスポートなどの身分証明書に使う写真と、同じものとして考えている方です。

しかし、この二つは、写真を使う目的が違います。

身分証明書の写真で最も大切なのは、「写っている人物が本人であると確認できること」です。一方、就職・転職用の写真には、本人確認に加えて、「どのような印象の人なのか」を伝える役割があります。

もちろん、写真だけで採否が決まるわけではありません。しかし応募書類を開いたとき、採用担当者が最初に目にする情報の一つであることは確かです。

その意味では、就活写真は形式上は証明写真でも、役割としてはプロフィール写真に近いものだと僕は考えています。

免許センターや交通安全協会などで、運転免許証の写真を撮った経験がある方も多いと思います。椅子に座り、正面を向き、数回撮影して終了する。本人確認用の写真であれば、それで必要な役割を果たしています。

しかし、就活写真まで同じ考え方でよいのでしょうか。

僕は国政選挙のポスター撮影や、企業経営者のプロフィール撮影も行います。ただし、国政選挙のポスターを「証明写真プラン」で撮影することはありません。同じ人物を正面から撮る場合でも、写真を使う目的、見る人、必要な印象がまったく違うからです。

選挙ポスターには、有権者にどのような人物として伝えるかという設計が必要です。経営者のプロフィール写真にも、信頼感や専門性、その人らしさが求められます。

就活写真も、選挙ポスターや経営者撮影ほど表現の幅は広くありませんが、単に「顔が確認できればよい」という写真ではありません。

清潔感、誠実さ、知性、落ち着き、意志の強さ。限られた構図の中で、その人が本来持っている良さを、見る人にきちんと伝える必要があります。

ところが、多くの方は普段、プロに写真を撮られる機会がほとんどありません。そのため、最初に撮った就活写真を見て、「証明写真だから、これでいい」と判断してしまいます。

それが悪いわけではありません。ただ、ほかの撮り方や仕上がりを知らないまま、大切な応募写真を選んでしまうのは、少しもったいないと思うのです。

もっと自然に見える表情があるかもしれない。顔の向きや姿勢を少し整えるだけで、印象が変わるかもしれない。肌の明るさやメイクも、鏡で見たときと写真に写ったときでは違って見えることがあります。

「証明写真だから、顔が写っていればよい」ではなく、「会う前の自分を、どのように伝えるか」。

そこまで考えてつくるのが、就職・転職用の証明写真です。

だから、就活写真は簡単ではありません

僕自身、これまで多くのフォトグラファーを採用してきました。その中には、長年の撮影経験があっても、「証明写真は簡単ですから」と言う人がいます。

率直に言えば、僕はそういう言葉を聞いた時点で、そのフォトグラファーを信用しません。そして実際、そのような考えで撮影された写真は、お客様から高い評価を得られないことがほとんどです。

就活写真は、とても難しい撮影です。

基本的には正面を向き、服装もある程度決まっています。大きくはしゃいだ笑顔も適していません。背景も構図もシンプルです。

自由度が低いから簡単なのではありません。自由度が低い中で、その人らしい表情、清潔感、知性、誠実さ、意志の強さを表現しなければならないから難しいのです。

しかも、それはフォトグラファーが一方的につくるものではありません。限られた時間の中で会話をし、緊張をほぐし、表情や姿勢を整えながら、お客様とフォトグラファーが一緒につくり上げていくものです。

初めて写真館で撮影すれば、仕上がった写真を見て「きれいに撮れている」「これで十分」と思うかもしれません。

しかし、それは、ほかの仕上がりをまだ知らないからかもしれません。

もっと自然で、もっと本人らしく、見る人にその方の良さが伝わる写真があるとしたら、それを見てから選んでほしい。僕はそう考えています。

就職や転職は、人生の大きな節目です。これまで何万人もの方を撮影してきましたが、皆さん真剣です。だから、撮る側も同じくらい真剣でなければならないと思っています。

就活情報に、振り回されないでほしい

今は、インターネットやYouTube、SNS、就活ブログなどに、さまざまな情報があふれています。

「女性のスキッパーシャツは避けるべき」

「銀行志望の男性はストライプのネクタイを着けてはいけない」

本当に、そこまで単純な話でしょうか。

僕が撮影した方の中には、スキッパーシャツで国家公務員総合職試験に合格し、面接も通過した方がいます。ストライプのネクタイを着けて、都市銀行に入行した方もいます。

服装に何の配慮もいらない、という意味ではありません。しかし、シャツの襟の形やネクタイの柄だけで、採用結果が決まるわけではありません。

インターネットには、もっともらしく見える情報が大量にあります。ところが、誰が書いたのか、何を根拠にしているのか分からないものも多い。必要以上に不安をあおる情報に振り回され、自分らしさを失ってしまう人もいます。それは、とてももったいないことです。

良い印象は、容姿だけでは決まりません

人には必ず、良いところと、そうでないところがあります。

就活では自己分析をします。しかし自己分析とは、誰かと比べて、自分にものすごい実績があるかどうかを探す作業ではないはずです。

目立った実績が見つからないからといって、「自分には何もない」「自分は駄目だ」と考える必要はありません。大切なのは、自分がどのような人間で、何を大切にし、どのように仕事と向き合おうとしているのかを知ることです。

容姿が整っていることだけが、「良い印象」ではありません。

  • 誠実そうに見える。
  • 話をきちんと聞いてくれそうに見える。
  • 落ち着いて仕事に取り組みそうに見える。
  • 自分の考えを持っていそうに見える。

そうした、その人が本来持っている良さが自然に伝わること。それが、就活写真における良い印象だと僕は考えています。

就活写真を、必要以上に難しく考える必要はありません。ネット上の細かな情報に振り回されるのではなく、自分の良さがきちんと伝わる写真をつくる。まずは、そこからシンプルに考えてみてはいかがでしょうか。

Hoshina
リクルートフォトスタジオ 本店フォトグラファー